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【開催報告】企業事例から学ぶ! サーキュラーエコノミー(循環経済)の動向 第3回:車×サーキュラーエコノミー

2024年8月29日(木)企業事例から学ぶ! サーキュラーエコノミー(循環経済)の動向 第3回:車×サーキュラーエコノミー をエコパルなごやにて開催しました !!

第3回講師には、トヨタ自動車株式会社 カーボンニュートラル先行開発センター

環境エンジニアリング部 リサイクル推進グループ主幹の三橋 秀渡氏をお招きし、ご講演をいただきました。

同社では、1992年に「トヨタ地球環境憲章」を策定、さらに2015年には、「トヨタ環境チャレンジ2050」を発表し、地球環境の問題に対してクルマとの関わりと同時に社会にプラスをもたらすことを目指した取組みを進めていらっしゃいます。

講演前の時間を利用して、自動車のリサイクル過程で変化していくリサイクル素材のサンプルを何点かご提示くださいました。参加した皆さん、興味深々。サンプルの前は、すぐ人だかりになりました。実物を見ることで再資源化に向けた取組みがぐっと身近に感じられますね。

講演では、はじめにサーキュラーエコノミーについて自動車業界の全体像、世界と日本における自動車生産台数や国内での自動車の寿命、そして自動車におけるリサイクルの動向等についてお話がありました。

自動車の年間生産台数は一体どのくらいなのでしょうか。

一般社団法人日本自動車工業会(JAMM)の2022年データによれば、世界では約8500万台、日本ではその約10%の800万台を生産しているそうです。

私たちの行動範囲を広げてくれる自動車。生活にかかせないという人も多くいます。それだからこそ、自動車のリサイクルには私たちも注目していきたいところです。

日本では2005年に自動車リサイクル法が施行され、自動車メーカーに使用済み自動車の再資源化を義務づけています。

自動車業界では自動車が生まれその役目を終えるまでを「クルマのライフサイクル」として、開発・設計から廃棄までをトータルで考えて、限りある資源を有効に活用し、再利用できる仕組みや工夫を進めているようです。

トヨタ自動車株式会社でも、廃棄物の発生を抑制すること、再利用可能なものは繰り返し利用すること、廃棄物を再資源化することを目指しています。

以下のウェブサイトにある「クルリサ ~クルマとリサイクル~」に同社独自の詳細な取組みが掲載されています。 https://global.toyota/jp/sustainability/report/vehicle-recycling/

ただ、使用済み自動車のリサイクルを実現していくためには、さまざまな技術開発や工夫が必要です。三橋様は、リサイクルに向けた具体的な取組みを動画も交えわかりやすく話してくださいました。

使用済みの自動車のリサイクルは大きく分けて、部品・鉄・銅・アルミ・希少金属・ASR(Automobile Shredder Residueの略で自動車破砕残さのこと)に分類されます。車のウィンドウやシート等はASRとして、そこからガラスや樹脂類等を分別する技術が開発されています。

部品としてリユースするもの・金属としてリサイクルできるもの・樹脂等粉砕して形を変えてリサイクルするもの、自動車の部位ごとに再資源化が進められています。

例えば、同社では工場で発生する超硬工具(タングステン)を分別回収し、100%再資源化しているとのことです。

続いて、自動車をリサイクルしやすくするための工夫について。キーワードは「易解体設計」です。

自動車の開発設計段階では、「解体しやすい車両構造」を意識した工夫が行われています。

車両部品というとどれも重量があります。そこで、解体性を向上させるために、作業者にとってわかりやすい目印をつけ、そこから部品を取り外せば重い部品をバランスよく取り外せたり、引きはがす力が軽減できるといった工夫が行われています。

また、ワイヤーハーネス(電源供給や信号通信に用いられる複数の電線の束と、端子やコネクタで構成された集合部品)では、他の部品に極力干渉せずに引き抜ける視認性の高い目印をつけるなどアイデアと技術でリサイクルに向けた取組みがなされています。

お話の中で「再資源化することをいかに簡単にするのか、再資源化したものを技術でいかに使うのか、設計に織り込んでいくのか、ということを技術を含めて取組んでいる。」という言葉が印象的でした。

現在ある使用済みの自動車の再資源化だけでなく、生産する前からライフサイクルを考えた取組みが、積極的に、しかも細やかに行われていることに驚きました。再資源化には、技術の進歩だけでなく、働く人の意識やアイデアによる成果も大きく関わると感じました。

質疑応答ではいくつか質問があり、参加した皆さんの関心の高さがうかがえました。
例えば中古部品の品質の担保に関する質問では、リユース部品が製品として安全に作動し、使用に耐え得る品質が十分担保できる部品として提供されているとのことでした。
また、自動車部品以外でのサーキュラーエコノミーとしての取組みに関する質問では、社内でのペットボトルの回収や海外の作業着をリサイクルして自動車の吸音材のフェルト等として活用していること等をお話しくださいました。
その他、バンパーや樹脂の再資源化へのコスト(作業面・経済面)についての取組みには、経済合理性が成り立たない部分について、リサイクル素材の多用化や物流面でのコスト軽減も検討中とのことでした。

これからも自動車のサーキュラーエコノミーは、多くの人によって関連分野を広げつつ、そのクオリティを高めていくことでしょう。

これで第3回の開催報告は終わりです。
三橋様、ご参加してくださった皆さま、ありがとうございました。

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